「虎に翼」の最終週では、尊属殺重罰規定に関する違憲判決が下される重要な法廷シーンが描かれました。この法廷シーンの再現には、制作スタッフの綿密な準備と工夫が施されています。
NHKのスタジオ内に5度も法廷セットが作られたそうです。実際の法廷や写真資料を参考に、細部にまでこだわって設計されました。照明器具の選定や壁の質感など、時代考証を徹底して行い、1970年代の最高裁大法廷の雰囲気を忠実に再現しています。
ただし、台本の遅れにより、最高裁大法廷セットの壁画が描けなかったという裏話もあります。このような細かな部分まで気を配る姿勢が、ドラマの臨場感を高めているのです。
法廷シーンの撮影に関する詳細な解説はこちらの記事が参考になります:
ドラマのクライマックスとなった尊属殺人事件の判決シーンは、実際の1973年の判例を基にしています。桂場裁判長(松山ケンイチ)が言い渡した判決は、被告人に対して懲役2年6月、執行猶予3年というものでした。
しかし、この判決の真の意義は、刑法200条の尊属殺重罰規定が憲法14条1項に違反して無効であると宣言した点にあります。これは、1950年の合憲判決を覆す画期的な判断でした。
ドラマでは、桂場が恩師・穂高先生の遺志を継いで判例を変更したように描かれていますが、実際の判決はもう少し複雑な内容でした。尊属殺を重罰とすること自体は肯定しつつ、その法定刑の差が著しく不合理であるという理由で違憲としたのです。
この判決の詳細な解説と社会的影響については、以下の論文が参考になります:
日本法社会学会:「尊属殺重罰規定違憲判決の社会的背景と影響」
最終週を迎えた「虎に翼」のキャストとスタッフは、約1年に及ぶ撮影を終えて感慨深い思いを抱いていたようです。クランクアップは2024年8月31日に行われ、多くの出演者やスタッフが集まり、主演の伊藤沙莉さんを囲んで労をねぎらったそうです。
伊藤沙莉さんは、法曹界を目指す女性・佐田寅子を演じきった感想を「大変でしたが、とてもやりがいのある役でした」と語っています。共演の岡田将生さんや森田望智さんも、長期間にわたる撮影を通じて役への理解が深まったと振り返っています。
監督やプロデューサーからは、「現代にも通じるテーマを描くことができた」「法曹界の歴史を多くの人に知ってもらえてよかった」といった声が聞かれました。
キャストやスタッフのインタビュー動画はこちらでご覧いただけます:
「虎に翼」は、日本の法曹界における女性の地位向上の歴史を描いたドラマです。最終週では、1970年代の法曹界の姿が描かれましたが、これは現代の法曹界にも大きな示唆を与えています。
ドラマ内で描かれた尊属殺重罰規定の違憲判決は、法の下の平等という憲法の理念を実現する重要な一歩でした。この判決を機に、日本の刑法や家族法は大きく変わっていきます。
現代の法曹界では、女性の進出が進んでいますが、まだ課題も残されています。例えば、2024年現在、最高裁判事15人のうち女性は3人にとどまっています。ドラマが描いた寅子たちの奮闘は、今も続く平等への道のりを示唆しているのです。
法曹界における男女共同参画の現状と課題については、以下の報告書が詳しいです:
ドラマ「虎に翼」の主人公・佐田寅子のモデルとなった三淵嘉子さんの実際のその後の人生も、非常に興味深いものでした。
三淵さんは最高裁判事を退官後も、少年法改正問題に取り組み続けました。特に、少年犯罪の厳罰化に反対する姿勢を貫き、少年の更生と社会復帰の重要性を訴え続けたのです。
また、女性の社会進出を支援する活動にも力を入れ、後進の育成にも尽力しました。法曹界だけでなく、様々な分野で活躍する女性たちのロールモデルとなったのです。
三淵嘉子さんの生涯については、以下の伝記が詳しく紹介しています:
このように、「虎に翼」の最終週は、ドラマとしての完結だけでなく、実在のモデルの生涯を通じて、法曹界と社会の変革の歴史を私たちに伝えてくれました。ドラマを通じて描かれた「正義」や「平等」への思いは、現代の私たちにも大切なメッセージを投げかけているのです。