「虎に翼」の主人公・猪爪寅子のモデルとなった三淵嘉子は、日本で初めての女性弁護士の一人であり、後に裁判官としても活躍した人物です。1914年に生まれた三淵は、当時としては珍しく、父親から「普通のお嫁さんにならず、専門の仕事を持つための勉強をしなさい」と諭されて育ちました。
1932年、女子に唯一法学の門戸を開いていた明治大学専門部女子部法科に入学。その後、明治大学法学部へ進学し、卒業生総代を務めるほどの優秀さを発揮しました。1938年には司法試験に合格し、1940年に弁護士登録をして本格的な活動を開始しました。
三淵嘉子の生涯については、以下のリンクで詳しく紹介されています。
三淵嘉子の生涯と主な出来事
ドラマ「虎に翼」では、猪爪寅子が戦前から戦後にかけて、様々な困難に直面しながらも法律を武器に奮闘する姿が描かれています。戦前は女性であるがゆえの偏見や差別と闘い、戦後は新しい憲法のもとで個人の尊厳や平等を守るために尽力する姿が印象的です。
特に印象的なシーンとして、寅子が戦後、新たに公布された日本国憲法を新聞で読む場面があります。この場面は、個人の尊厳と幸福追求権を保障する憲法の本質を象徴的に表現しており、多くの視聴者の心に残りました。
ドラマの中で描かれる法律問題や社会課題は、現代にも通じるものが多く、視聴者に深い考察を促しています。
「虎に翼」は法曹界からも高い評価を受けています。その理由の一つは、ドラマが単なる昔話ではなく、現代にも通じる問題を扱っているからです。女性弁護士の佐藤倫子氏は、「寅子が直面する壁は、残念ながら昔話ではありません。だからこそ多くの人に響いたのではないでしょうか」と語っています。
ドラマは、差別される女性や在日コリアン、性的少数者らを描き、その痛みに光を当てています。これは日本国憲法第14条の「法の下の平等」を体現しているとも言えるでしょう。
法曹界からの評価については、以下のリンクで詳しく紹介されています。
朝ドラ「虎に翼」が法曹界でも絶賛されたワケ
「虎に翼」は、特に若い女性層から高い支持を得ています。NHKの調査によると、F1層(20〜34歳女性)の視聴者が前回、前々回の朝ドラより多いという特徴があります。
この人気の理由として、以下のポイントが挙げられます:
若い視聴者の中には、このドラマをきっかけに法律や社会問題に興味を持つ人も増えているようです。
「虎に翼」の制作には、綿密な取材と史実に基づいた脚本作りが行われました。NHK解説委員の清永聡氏は、3年がかりで『家庭裁判所物語』という本を執筆し、それがドラマの重要なベースとなっています。
また、ドラマでは実在の人物をモデルにしたキャラクターが多く登場しますが、それぞれのモデルとなった人物の遺族や関係者に取材を行い、リアリティを追求しています。例えば、家庭裁判所の父と呼ばれた宇田川潤四郎氏をモデルにした多岐川(滝藤賢一)のキャラクターは、宇田川氏のご親族から高い評価を得ています。
ドラマの制作秘話については、以下のYouTube動画で詳しく紹介されています。
このように、「虎に翼」は単なるフィクションではなく、綿密な取材と史実に基づいた重厚なドラマとなっています。法律を武器に戦う女性弁護士の姿を通じて、視聴者に法律や社会問題について考えるきっかけを与えているのです。