「虎に翼」の山田よねは、法律を学ぶ男装の女性として登場します。常に怒ったような表情で、誰とも群れず、孤独な一面をちらつかせる不思議な存在です。よねは法律を"クズをぶん殴ることができる唯一の武器"と考え、たとえ自分に不利益があろうとも信念を曲げない強い意志を持っています。
主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)とは明律大学女子部で出会い、当初は対立的な関係にありますが、物語が進むにつれて友情を育んでいきます。よねの厳しい言動は、実は愛情表現の一つであり、寅子に対する思いやりが隠されています。
よねの男装には、壮絶な過去が関係しています。貧しい家庭に生まれ、姉が身売りされるなど過酷な環境で育ったよねは、「女性らしさ」とは遠い振る舞いをするようになりました。この経験が、よねの強い信念と社会を変えたいという思いの原動力となっています。
よねは住み込みで働きながら弁護士を目指しており、その姿は視聴者に深い印象を与えています。過去の苦しみを乗り越え、法律という武器を手に社会と戦おうとするよねの姿は、多くの人々の心を打っています。
土居志央梨は、よね役のオファーを受けた当初、衝撃を受けたと語っています。これまで女性らしい役が多かった土居にとって、男装の役は大きなチャレンジでした。
役作りでは、肩まであった髪を約30センチ切り、昭和当時の男性ものスーツを着用しました。声色にも工夫を凝らし、地声より低めを意識して「よねの声を探す作業」を行ったそうです。さらに、勉強熱心な役柄を表現するため、鉛筆の持ち方まで矯正するなど、細部にまでこだわりました。
土居は、よねの役を通じて自身の10代、20代の頃の思いを重ね合わせていると語っています。「全員ぶっ倒す。」という気持ちで上京した経験が、よねの反骨心と重なり合い、役への理解を深めているようです。
よねのキャラクターは視聴者から大きな反響を呼んでいます。SNSでは「男装がかっこいい」「不器用なよねがいとおしい」といった声が多く見られます。また、よねの壮絶な過去が明かされた回では、「まじで泣く」「言葉にならない」など、強い感情を抱いた視聴者も多かったようです。
土居志央梨の演技力も高く評価されており、よねのキャラクターを通じて土居自身の知名度も急上昇しています。朝ドラ出演が土居のキャリアにとって大きな転機となっていることは間違いありません。
「虎に翼」は、日本初の女性弁護士で後に裁判官となった三淵嘉子さんをモデルとしたオリジナルストーリーです。よねのような男装の女性が実際に存在したかどうかは定かではありませんが、当時の女性が法曹界で活躍することの困難さを象徴しているといえるでしょう。
日本の法曹界における女性の歴史は、決して平坦なものではありませんでした。1940年に三淵嘉子さんが日本初の女性弁護士となり、1949年には最高裁判所裁判官に就任しました。しかし、その道のりは決して容易ではなく、多くの偏見や障壁と闘わなければなりませんでした。
よねのキャラクターは、こうした歴史的背景を踏まえつつ、女性が法律を武器に社会と闘う姿を描いています。男装という設定は、当時の社会における女性の立場の困難さを象徴的に表現しているといえるでしょう。
三淵嘉子さんの生涯と功績について詳しく知りたい方は、以下のリンクをご参照ください。
「虎に翼」は、こうした歴史的背景を踏まえつつ、フィクションとして再構成された物語です。よねのような個性的なキャラクターを通じて、視聴者に当時の社会状況や女性の苦悩を伝えると同時に、現代にも通じるメッセージを発信しています。
男装のよねが物語の中でどのように成長し、寅子たちとの関係を深めていくのか、そして法曹界でどのような活躍を見せるのか、今後の展開が非常に楽しみです。土居志央梨の演技とともに、よねの人物像がさらに深まっていくことが期待されます。
「虎に翼」の制作意図や背景について、以下のNHKの公式サイトで詳しく紹介されています。
最後に、「虎に翼」は単なる歴史ドラマではなく、現代社会にも通じるテーマを多く含んでいます。男女平等、社会正義、個人の尊厳など、普遍的な価値観を問いかける作品となっています。よねのような個性的なキャラクターを通じて、視聴者一人一人が自分自身の生き方や社会との関わり方を考えるきっかけになるのではないでしょうか。